忍者ブログ
2008年発行の京園アンソロジー企画サイトです。  2016年現在も通販受付中!   管理人の過去SSも展示してます。
最新記事
カテゴリ内検索
★必須アイテム★
最新刊出るよ! 名探偵コナン 82 (少年サンデーコミックス) 名探偵コナン 81 (少年サンデーコミックス) 名探偵コナン (Volume22) (少年サンデーコミックス)
名探偵コナン (Volume33) (少年サンデーコミックス)
名探偵コナン (Volume52) (少年サンデーコミックス)
劇場版 名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター) スペシャル・エディション(初回限定盤) [DVD]
with Ajax Amazon
Twitter
たまにコナンネタ呟いてます(^・^)
最新コメント
カウンター
ご来場 ありがとうございます!
通販申し込みはこちら
カレンダー
08 2017/09 10
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
プロフィール
HN:
中島かえる
性別:
非公開
バーコード
P R
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [11
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 その頃、わたしはとても若くて、未来のことなど考えることも出来なかった。
 小さな希望を除いては。

 わたしの大好きな人は、本当にやりたいことを既に見つけていて、文字通り世界中を飛び回っている。
 わたしはといえば、人よりも裕福な家に生まれて、好きなことだけをやって、何も考えずに、ただ幸せになることだけを夢見ていた。
 ひとつでも思い通りにならないことがあれば、すぐにふくれてしまう世間知らずで、わたしよりも夢を追いかけてしまう恋人に腹を立てていた。
 わたしには、何もないのに。
 小さな頃から漠然と抱いていたささやかな「夢」だけしか。

「園子さんは、なにかやりたいことはないんですか?」

 その一言が、わたしの不機嫌に拍車をかけた。
 彼にしてみれば何気ない疑問。
 親の家に住み、働くこともせず、何食わぬ顔で暮らしているわたしが不思議だったに違いない。
 会話の中でのさりげない一言にわたしの心はささくれだった。

 久しぶりに逢えたというのに、そんなこと言わなくてもいいじゃない。

 心の中の小さなあせりをズバリと言い当てられた気がして、わたしは手元のグラスをストローでかき回した。
 アイスコーヒーの中の氷が小さく音をたて、くるくると回転する。

「やりたいこと? ・・・そうね、いっぱいあるけど、ありすぎてわからないの」

 それは嘘ではない。
 毎日毎日、飛び込んでくる情報に振り回されながら、その日限りのやりたいことは消化していっている。
 でも、それは後に残るものではなくて、わたしの中に蓄積されるものは、なにもない。

 そうよ。
 わたしが本当にやりたいこと、なりたいものは・・・。

 目の前にいる恋人は、呑気な顔をしてわたしを見つめている。

 ねえ、本当にわからないの?

 あなたでなくちゃかなえられないわたしの夢が。

 突然イライラが募ってしまい、ふと、視線をそらした。

「本当にやりたいことは、わたし一人じゃどうにもならないことだしね・・・」

 ぼそっとつぶやくようにそう言って、アイスコーヒーを一口飲んだ。
 不貞腐れたようなわたしの態度に、彼は当惑を隠せないながらも、熱弁をふるう。
 わたしのつぶやき、聞こえてたのね・・・。

「やりたいことがあるのなら、ぜひ頑張ってみるといいですよ。 私も協力は惜しみませんから」
「協力? 本当に?」
「勿論です」
 わたしがなにをやりたいのかも知らないで、きらきらと輝いた瞳でそういっても、説得力はない。
 わたしは鼻で笑って、きっぱりと言い捨てた。
 ・・・我ながら意地悪だ。
「無理だよ」
「は?」
「無理だ、って言ったのよ。 わたし、苦労はしたくないの。 ううん、したことがないから、出来ないの。 それにウチのパパはわたしを可愛がってて、絶対に手放さないだろうし。 きっとね、無理なのよ」
 半ばヤケ気味に、声高に叫んでしまった。
 こんな可愛くない女、あきれられるだろうなあ、と心の片隅で考えながらも言わずにはいられなかった。
 だって、あなたがわたしの心を逆撫でするようなことばかり、言うからよ。

 わたしが一番欲しいものに気付いてくれないあなたが悪いのよ。

 わたしが急に大声を出したことに驚いて、彼は口をつぐんだ。
 そのまましばらく、考えをめぐらすように無言になった。
 少し居心地が悪かったけれど、言ったことで後悔はしていなかった。
 ただ、嫌われてしまうかな、と不安はあったけれど。
 カラカラとアイスコーヒーの氷の音が耳につく。
 他の音は聞こえないわたしの耳に、彼の言葉が飛び込んできた。

「無理ではないですよ」
「え?」
「私はきっと、あなたの父上を説き伏せます。 約束しましょう」

 彼はポケットからくしゃくしゃになった小さな包みを取り出してわたしの前に置いた。

「ずっと言いたかったんです。 あなたがほかにやりたいことがないのなら・・・受け取ってくれますか?」

 長いこと、彼のポケットに納まっていたらしきそれは、小さな宝石をあしらった、可愛いリング。
 わたしの左手の薬指にぴたりとはまる。

 胸のなかから熱いものがこみ上げて来て、両の瞳からとめどもなく溢れ出した。
言葉が出ない。

「苦労はかけないつもりですが、贅沢はできないかもしれません」

 わたしをあやすように、彼は少し照れたように笑いながら、そう言った。

 小さな頃から願っていた夢は、彼の言葉で現実になる。

 わたしは今も彼に攫われたまま、やりたかったことを楽しんでいる。



 今から少しだけ、昔のお話。

拍手[21回]










あとがきです。

というより、補足ですね。
この作品は、2003~2004年くらいに
「京園至上主義同盟」さんに投稿したお話です。

私もまだ、京園はまりたてで勢いで書いた記憶があります。
少々、加筆修正しました。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Copyright (C) 2009 京園アンソロジー Wild & Honey, All right Resieved.
*Powered by ニンジャブログ *Designed by 小雷飛
忍者ブログ / [PR]