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初夏の風が吹く海岸を、ふと思い出すことがある。

 幼い頃、別荘地での出来事だ。

 陽が明け切らぬ早朝のこと、何故か彼女は一人で海岸に居た。

 朝もやで霞がかった視界には砂浜も海も同じくらい広く見えている。

 規則正しく寄せては返す波の音を聞きながら、まるで世界にたった一人取り残されたような錯覚を覚えてしまい、好奇心旺盛な彼女も少し心細くなってしまった。

 そろそろ別荘へ帰ろうと振りかえり、砂浜を水際に平行に歩き始めた途端、ごうとすごい海風が彼女の上を通り過ぎた。

 外に出るときは必ずかぶりなさい、といわれたつばの広い白い帽子が吹き飛んで、海の中へ落ちてしまった。

 咄嗟に拾いに行こうと駆け出した彼女は、今履いているのがお気に入りの靴であることを思い出した。

 靴を濡らしてしまうのが嫌で波打ち際で止まった彼女の目に、白い男の子が入り込んできた。

 ばしゃばしゃと服を着たままで水に入り、波の上で揺れている彼女の帽子を掬い取って、そのまま彼女に向かってくる。

 さっきまで誰もいなかったはずのこの場所に突然現れた男の子は、「はい」と彼女に帽子を手渡した。

 驚きで目を見張ったままそれを受け取った彼女は、やっとの思いで「あ、ありがとう」と声に出した。

 それを聞いて男の子は日に焼けた顔をほころばせ、こくりと頷いた。

 彼女はそれで警戒心がほぐれ、思ったことを口にする。

「服、濡れちゃったね。大丈夫? 風邪ひかない?」

「こんなのすぐ乾くから」

「ここで何してるの? どこから来たの」

「稽古。毎朝ここを走ってるんだ。近所に住んでるから」

 ふうん、と頷く彼女にもう一度にっこりと笑いかけて、彼はじゃあ、と軽く会釈をしてもと来た方へ駆け出した。

 裸足の少年の足跡がまっすぐに彼女の元から延びていく。

 出てきたときと同じように突然に彼の姿は朝もやに消えてしまった。
 さよならもちゃんと言えず、顔も思い出せない男の子。

 その面影が今、隣で眠る人を見て思い出される。

 ふふっと笑んで、寝顔を楽しむのは彼女の特権だ。

 確かめる術はない。もとより確かめる気すらない。


 彼女の胸に眠らせたままの、優しい想い出。

 それは彼女だけの秘密なのだから。


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