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「まことさぁ~ん!! ここ、ここぉ~」

 園子の呼ぶ声はあきらかに酔っている。
 サークルの飲み会で遅くなるという園子に、さすがに行くなとも言えず、迎えに行くから必ず電話を寄越すようにと言い含めた。
 飲み会が行われるという小洒落たダイニングバー近くの喫茶店でいつ鳴るかとまんじりと携帯電話を睨んでいた京極は、着信とともに席を立ち上がって 「すぐ行きます」 と園子の下へ駆けつけた。
 件の店の前で、周りの人間に支えられながら陽気に手を振る園子は、京極が近寄ると素朴な疑問を口にした。
「早かったね~。 どこにいたのぉ?」
 ・・・それは言わない。
 京極は曖昧な笑みだけを園子に返した。
 酔っているためか、園子もそれにつられる様にふわりと笑ってそれ以上は追求してこない。
 そのまま一歩、京極に近付こうと足を踏み出した園子が、かくりとよろけた。
 慌てて支えようと手を差し出したが、横にいた男が一瞬早く園子を捉えた。
「大丈夫か?」
「ん・・・ありがと~」
 特に男に罪はない。 確かにそれはわかるが、しかし、感情は考えについてこない。
 男に笑いかける園子にも、気安く園子に触れる男にも苛立ちが募り、自然京極の瞳は半分以下に細まった。 眉間による皺は隠せない。
 おもむろに足を踏み出した京極は、支えられたまま足元のおぼつかない園子を男から引き剥がすように、腰と膝を掬い上げて抱きかかえた。
「ひゃ?!」
 急激な体勢の変化に驚いて、園子は慌てて京極の首にぎゅっとしがみつく。
「飲みすぎのようですね。 早く帰ったほうがいいでしょう」
 園子にそっと囁いて、支えていた男に視線を投げた。
「門限がありますので、お先に」
 ぺこりと頭を下げると、男は呆けたようにこっくりとうなづいた。
 では、と店の前にたむろしていたサークルメンバーであろう人間の輪を、毅然とした態度ですり抜ける。
 度肝を抜かれたような顔で無言であった人間たちのさわさわと囁く声が背後で広がっているようだったが、京極は振り返ることもせずその場を後にした。

 無言で歩き続ける京極に、だんだん酔いが醒めたのか園子が足をバタバタさせて抵抗する。
「ちょ、真さん、わたし歩けるから。 下ろしてよ」
 深夜に近い時刻であっても人通りはある繁華街だ。
 すれ違う人々の好奇の視線が突き刺さるが、京極はなんとも思わない。
 しかし園子は違うのだろう、そわそわと落ち着きのない声で京極に解放を要求する。
「大丈夫だってば。 早く」
 黙ったままの京極の顔を、抱きかかえられたままの園子が覗き込んでくる。
「ねえったら」
 大きな交差点の信号に立ち止まり、京極はタクシーを止めるために園子をそろそろと地上へ下ろした。
 とん、と足を地に付けて、ふらりとよろけた身体を京極は受けとめた。
「大丈夫じゃないでしょう」
「大丈夫・・・」
 ついと離れようとする園子の肩を、力を入れて引き戻す。
 ぺたりとくっついたままの姿勢で、園子が京極の顔を見上げる。
 けれど抵抗はしないまま、園子はあらためて京極の胸に頭を預けた。
「・・・もう遅い。 送りますよ」
 憮然とした面持ちで、交差点を行き交う車の流れに目をやってもタクシーは一台も見当たらない。
 少し待つしかない。
「・・・あのね」
 園子が京極のシャツを引っ張って合図した。
「今日は遅くなるから、友達のところに泊まるって言ってあるの。 真さんの家に連れてって」
 甘い酒の香りと酔って潤んだ目元に心が引き寄せられた。
 その言葉の意味は、推して知るべし。
 京極は息をのみ、とっさに言葉を返せなかった。
「・・・ダメだったら、いいよ。 誰か、他の子に電話して頼むから」
 ポケットから携帯電話を出すと、慣れた手つきでボタンを操作する園子。
「他の子」 という言葉に何故か先ほどの男を思い出し、苛立ちが再燃する。
 ちりちりと胸を焦がす炎は暴走し、京極の手は園子の手から携帯を奪い取り、ぷつんと電源を落とした。
 そのまま伸ばした手でタクシーを止めて、園子を乗せ、後から乗り込んだ京極は行き先に自分の住所を告げた。
 車が走り出すと、園子は京極の肩によりかかり、すうすうと寝息をたてていた。
 酔った挙句の言葉なのか、園子の真意は計れないまま、けれど車はもう走り出してしまった。
 なにより京極の胸のざわめきはもう抑えられない。
 ただの友達にさえ感じる苛立ちを収められるのは、園子のぬくもりでしかありえない。
 眠る園子の手をぎゅっと握ると暖かな手がぴくりと動く。
「・・・着いたの・・・?」
「もうすぐ、着きますよ」
 そう言うと園子はまた眠りの淵に落ちた。
 園子の寝顔を見ながら、京極は思う。

 今は眠っているといい。
 もうすぐ、眠ることはできなくなってしまうから。






***********了**************20070212up20120818加筆修正
 

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